盲導犬パピーウォーカーの体験
ーラブラドール・レトリバーのパピーウォーカーをして思ったことー

将来盲導犬になる、ラブラドール・レトリバーの子犬を預かり育成するボランティア(パピーウォーカー)を体験した記録です

10516766_522023271264125_4425159256076309661_n.jpg

リンク 

寄稿「盲導犬の限界 視覚障害者に盲導犬ロボットを」 

毎日が3K日記 盲導犬ピエール http://newcaja3k.blog92.fc2.com/blog-entry-1415.html

ある盲導犬育成団体について http://www.asahi-net.or.jp/~zi3h-kwrz/animal/puppywalker.html



マスコミでも盲導犬が頻繁に取り上げられる昨今、パピーウォーカーをやってみたいと思う人も多いことでしょう。我が家でも念願かなってパピーウォーカーをしましたが、正直、思ったよりずっと大変でした。うちの場合、回りに経験者もおらず、犬を預かった盲導犬協会から経験者を紹介されることもなかったので、事前に話も聞けませんでした。そこで、パピーウォーカーを志す人の参考になればと思い、断片的ですが我が家の生(なま)の体験と感想をお伝えします。


1.あなたが預かるのは「盲導犬」ではありません

我が家に来たのは何のしつけもされていない生後2カ月の大型犬(ラブラドール・レトリバー)の子犬です。盲導犬候補だからおとなしいなんて、とんでもない!普通のやりたい放題の子犬でした。家や家具はかじりまくり、しばらくはたれ流し(室内飼いです)、散歩は引っ張られてチョー危険。犬はあっという間に大きくなり25キロほどになります。

しつけは必要ないと盲導犬協会から言われても、最低限のしつけをしないと困るのはこちらです。また、えさの銘柄や量は指定されていますが、レトリバーはとにかく食い気ひとすじなので、えさの量を守るのは結構大変でした。少し油断したすきに何でも(食べ物以外も!)食べてしまいます。預かった一年間いろいろな事件や事故が起こりました。幸い大事には至りませんでしたが。

犬が病気になったら、万一行方不明になったら、最悪、死亡したら。また、犬のせいで自分が骨折などのけがをしたら・・・。そんな場合も想定して、預かる前に、起こり得るいろいろな事故について盲導犬協会と、パピーウォーカーの責任や負担費用がどうなっているかを事前にしっかり確認してください。生きものを預かるのですから、契約書にちゃんとそういうことが書かれているはずです。パピーウォーカーをやってみたい思いが勝って、「たぶんそんな事故は起こらないから」と契約書もよく読まずに署名捺印をするのはやめたほうがいいです。

契約書がない場合は論外です。


2.お金も手間もかかります

パピーウォーカーはボランティアなので、犬のえさ代や医療費は基本的には自己負担です(一部を負担してくれる協会もあるようですが)。

我が家の場合、預かり期間が1年を超え、ワクチンと狂犬病注射を2度受けたのでそれだけで2万円を超えました。動物病院にもちょくちょくかかりましたが、盲導犬の子犬だからといって割引はありません。想定外のけがや病気の医療費についても、契約書に明記されているか事前によく確かめてください。


3.犬との別れに耐えられますか

我が家でも「最初から一年で返すと決まっているのだから」と犬を預かったものの、毎日一緒にいれば情も移り、気持ちの上では「自分の犬」になってしまいます。一年後の別れはとてもつらいものでした。よくいうペットロス状態です。犬を返した後の面会には制限があるし、無事盲導犬になっても行く先を教える協会と教えない協会があるので、事前によく聞いてください。

また盲導犬になれなかった場合、引き取って自宅犬として飼うことができる協会もあるので、引き取りを希望するのなら、前もって確認しておいたほうがいいです。


4.見学会(説明会)で大事なのは、犬のいる場所を見ること

我が家も参加したのですが、盲導犬協会では月に一、二度一般人向けに見学会(説明会)をやっています。パピーウォーカーをやってみたい人は参加してみたほうがいいでしょう。その際大事なのは、説明を聞くだけではなく、実際に犬のいるところ(犬舎)を見せてもらうことです。犬の飼育や訓練は協会によって違うので、犬舎をみればその協会の方針が少しはわかります。あなたが本当に犬好きなら、協会の方針が自分のポリシーに合うかどうかよく考えてパピーウォーカーを始めるほうが賢明です。せっかく一年間手間暇かけて犬を育てるのですから。

実際問題として盲導犬協会は全国に約11か所しかないので、選択の余地がほとんどないのですが、自宅に近いからという理由だけで、預かる協会を選ぶのはやめたほうがいいです。

我が家では犬を返した後しばらくして面会に行きましたが、犬が環境の激変からか激やせしており、協会からは納得のいく説明がなく、犬舎も見せてもらえなかったので、大変驚き失望しました。その後他の映像でその協会の犬舎を見たのですが、狭い箱型の犬舎をビルの一室に積んで(コインロッカーを連想しました)、数十匹もの犬を入れていると知り愕然としました。


5.我が家の結論

我が家の結論としては、もうパピーウォーカーは二度としません。自宅に他の犬や猫がいるとパピーウォーカーにはなれない決まりの協会が多いので、自分の犬を飼えば当然パピーウォーカーはできません。

また、これは予想外の結果でしたが、盲導犬制度自体についても多々思うことがありました。

人間には「便利」な制度かもしれませんが、健常者でも大変な犬の世話は視覚障害の方には大きな負担でしょうし、犬の寿命から盲導犬としての稼動はせいぜい8年です。また盲導犬1頭に自治体が公費で約200万円を支払っていることも初めて知りました。盲導犬を何頭ももらう人もいれば、盲導犬は特別な人しかもらえないと思っている視覚障害者もいるそうで、これは非常に不平等だと思います。犬が苦手、または犬を飼う環境にない視覚障害者はこの恩恵を受けられないのです。さらに盲導犬になれなかった犬や引退した犬もボランティアに引き取らせるなどボランティア頼りの部分が多いのも無責任だと思います。 

また犬にとってはどうなのか、短い一生に最低数回も飼い主が変わる、犬本来の体質まで否定するような訓練や盲導犬としての生活、しかも訓練しても3割くらいしか盲導犬になれない、なれない犬はどうなるのか、など大変疑問に感じました。

盲導犬は昔のドイツで戦傷兵のために作られた制度ですが、科学の発達した現在なら、人間にも犬にももっとよい方法があるはずです。なぜ盲導犬制度だけに莫大な公金や寄付を使う必要があるのでしょうか。皆さんにもぜひ考えてほしいと思います。



寄稿 「盲導犬の限界 視覚障害者に盲導犬ロボットを」

(著者は1年以上にわたり盲導犬ボランティアをし、盲導犬を使用する長年の友人もいる方です)

 盲導犬を連れた視覚障害者の事故が相次いでいますが、高齢化にともない、これから様々な事故が起こることが心配されます。視覚障害者のための盲導犬ですが、今、代替え手段が求められています。

 盲導犬の育成には多大なコストを有し、飼育・訓練に莫大な労力を要します。使用者にとっても犬の世話(食事、排せつ、手入れ、健康管理)もかなりの負担になり、犬の寿命から長くても8年で引退の時期が来ます。また、住環境、アレルギー、高齢等身体的な理由で盲導犬を持てない視覚障害者が圧倒的に多く、盲導犬はごく一部の視覚障害者しか使うことができないのが現状です。

 私は、全ての人が使うことのできる、盲導犬に代わるものはないだろうかと考えてきました。今、自動運転の車が走っています。 GPSが道案内もしてくれます。介護ロボット、お掃除ロボット、AIロボットと様々なロボットが身近なものとなっています。盲導犬は時代遅れなのでは?という思いになりました。

 調べてみると 盲導犬の役割を果たすロボットが研究、開発されていることがわかりました。例えば『日本精工』の盲導犬ロボット(註1)は、2016年に病院など屋内での施設案内用として実用化され、4年後の2020年には屋外利用の実現を目指すところまできています。ロボットなら盲導犬のように世話をする必要もなく、アレルギー等の心配もなく、メンテナンスを行えば使い続けることができ、安全性も高いと思います。

 視覚障害者の助けになりたいという、思いやりの心が技術開発に結実し、日本をはじめ世界中の道や駅のホームで盲導犬ロボットを見られることが目前にきていると感じます。このように盲導犬ロボット実用化への取り組みは着々と進んでいます。しかし、盲導犬を支援する団体は多いものの、盲導犬ロボットを支援する団体は見当たりません。

 これからは、全ての視覚障害者が平等に使用できる、視覚障害者の真のパートナーとなる盲導犬ロボットが認知され応援されることが望ましいと思います。2020年の東京オリンピックには、盲導犬ロボットを連れた方を見守り、声を掛け合える社会になっていてほしいと願っています。

 これからも盲導犬ロボットの研究開発をしている企業に、応援のメッセージを送っていこうと思います。 

(註1)日本精工株式会社は、日本の ベアリングメーカー (本社・東京都品川区)。国内ベアリング業界最大手。世界では3位。盲導犬型ロボットの研究開発にも携わり、2011年『国際ロボット展』 に出品以降、ロボットの 改良実用化に努めている。

inserted by FC2 system